自分は何者なのか。多感な中学2年生あたりで頭を悩ませ始める問いである。当然、自意識過剰なワタシもこの問いにぶち当たった。しかし答えはどこにも載っていないし、誰も教えてくれない。小童である中2などでは絶対に辿りつかない答えだ。ゆえにこの問いと向き合ってしまったら最後、その後の人生でたびたび顔を覗かせてくることになる。
「お前は何者なんだい?」
こうやってちょっかいを出してくるタイミングは、だいたいが人生に悶々としている時だ。なんて嫌味なヤツ。そういう自己肯定感低めな時に訊かれても「いったい何者なんだろうねぇ」としか返せない。仕事に行けなくなり、適応障害という診断を受け、休職となっている今はまさに人生の悶々タイムであり、何者か知りたい、何者かで在りたいと思わずにはいれらなかったりする。そんなタイミングで性格診断などと魅力的なものをオススメしてもらったのだから、意気揚々と臨むのは当然のこと。
1ヶ月ほど前に大濠公園でのお悩みリスニングで知り合った方からランチのお誘いがあり、食後のカフェ待ちをしているときに『MBTI診断』というものを教えてくれた。それはそこそこの数の質問に答えることで16種類の中から自分の性格タイプがわかるというもの。WEBで無料で、時間も10分ほどでできるということで、ウェイティングの間に質問に答えていく。ランチのお相手さんは『主人公』タイプと教えてくれた。しかもレアキャラの様子。羨ましい。憧れる。「ワタシは何者でもないのではないか」などと内向きな思いに駆られがちな今、ぜひワタシも『主人公』がいいな、などと思いながら、直感で回答を進める。
回答が終わる。結果ボタンを押す。開かれるページをウキウキウォッチングだ。とってもとっても『主人公』に憧れたワタシは『仲介者(INFP−T)』というタイプだった。うん、そうか。そうだよね。少しの寂しい気持ちを胸に、解説を読み進める。
『仲介者』は高い理想を持ち、共感力が高く、人助けを使命だと思っているらしい。ただ、高い共感力ゆえに世の苦しみを重圧として抱えてしまうようで、そこで疲弊してしまうようだ。世の苦しみとは共感のスケールがでかい。自分の苦しみだけで手いっぱいの今は世の苦しみはお預けにしておきたい。そんなスケールのデカさにおののく中「独創的かつ想像力豊か」という説明が目に入り、心惹かれる。悪くない。ステキだ。
帰ってからもネットでもう少し調べてみる。そうすると『仲介者』は世界的にレアキャラである、的なことが出てきた。これには更に心惹かれた。自意識というものが芽生えたころから、人より秀でたものが少ないような気がしていたワタシには『独創的』だったり『特別』『レア』とかはとにかく甘美な響きなのである。
「そうか。色々と悶々と考え、考えを拗らせたりして生きづらいとか思ってしまうのは、レアキャラだからか。それならしょうがないね。だってレアだもん。ンフフ」
『レア』というところに気を良くしたワタシはとてもスッキリとした気分となった。こうなると知りたい気持ちにも拍車がかかるというもの。調べを進める中で「日本人の中での割合」という情報にもぶち当たった。「どれどれ。日本人の中ではどれくらいレアなのじゃ?」という謎の上から目線で情報にアクセス。
「INFP−Tは日本人の中で最も多いタイプです」
無慈悲。三日天下ならぬ、数分天下だ。喜び損である。先ほどの心の高揚を返してほしい。典型的な日本人気質ってことじゃないですか。世界的にはレアでもワタシの活動拠点は日本限定なので全然嬉しくない。JAPANのレアキャラでいたかったのだ。どんなに強く願っても、時に世界は無常だよね。
かくして、自分は日本ではありふれた気質で今抱えている思いなども、結構ありふれていて、誰もがそれぞれに思い悩んで、なんとかかんとか頑張っているんだろうな、という結論に辿り着く。
だったら、そんなありふれているレベルで音を上げたワタシはしょうもないのだろうか。同じようなしんどさ、もしくはそれ以上のしんどさでも音を上げずに頑張っている人がいるんだから、ワタシももっと歯を食いしばって頑張らなければいけないのだろうか。
それは分からん。そうだと思う人もいるだろうし、そうじゃないと思う人もいるだろう。その時点で学校の勉強のような絶対の正解なんて無い。それぞれの価値観というフィルターでどう見るかだ。別にその人たちが責任や面倒を見てくれるわけでもない。いつだって責任は自分の意志、決断に置きたい。
それなら開き直って「ありふれている悶々のあれこれをわざわざ発信する価値があるんじゃないか」くらいに思っても良いのではないか。ありふれているからしんどくないとか大変じゃない、とかにはならない。むしろ、ありふれるほどしんどいし大変なんじゃないか。
「しんどいのは自分だけじゃない」とか「みんな頑張っているから、自分ももっとやらなきゃ」とか心身を張りまくるのは美徳とされがちなのかもしれない。けど、行き過ぎて一線を越えてしまわないよう、そうなる前に逃げる、っていうのも頑張りのひとつじゃないだろうか。自分が自分であるための頑張りだ。
一線を越える前に尻尾を巻いて逃げ出して、休職中の今をヘラヘラできているワタシはそう思う。そんなワタシの様を見て「そんなんでも良いんすね」って思える人がいるなら幸いだ。執筆冥利に尽きる。
劇的まで行くのは必然ではない。一線超えなくたって辛いもんは辛いし、そこまで行き切ってないからって頑張りが足りないなんてことにならないし、ならなくていいと思いたい。一線超えるかもっていう不安ってめちゃくちゃデカいんだし。ドラマの主人公を張れるようなカッコイイ挫折も大逆転劇もない。けど、絶望的な状況なんて味わないで済むなら一番良いだろう。
ワタシは『仲介者』なので、『当人』と『大変さ』の仲介できるような存在として、いろいろと面白おかしく発信していこう。
さて、自分の性格タイプが知りたくなった人もいるだろうから、ワタシが教えてもらった『MBTI診断』のリンクでも載せておこう。ちなみにワタシは、診断後に出てくる有料の解説書までは利用しておらず、無料の範囲のみで、あとは他のサイトを読み漁ったということも付け足しておこう。
性格は16タイプでも人生のタイプは16だけではない。人の数だけある。全部がオリジナルだ。ワタシはワタシであなたはあなた、人は人だ。それぞれに頑張ればいい。