2024/10/18 ZeppFUKUOKA。ステージ上には楽しそうにギターボーカルをする長瀬智也の姿があった。
 もちろんTOKIOのライブではない。それはKode Talkersのツアーライブ。
 Kode Talkersは2023年に突如誕生した長瀬の新しいバンド。インスタやXなどのSNSでの発信はあるが、ファンクラブもない、メディアへの露出もほぼ無い。音楽は配信もされていなければ、CDもタワレコなどで取り扱われているわけでもない。自主レーベルのサイトから購入できるのみ。活動、存在すら知らない人も多いだろう。
 TOKIO時代にはライブを観る機会はなかったが、この度情報をキャッチして、とうとう生の長瀬ライブを観ることが叶った。

 Kode Talkersはジャムバンド。ジャムバンドとは楽譜やアレンジに囚われず、即興で演奏するスタイルを指すらしい。確かにCDとは同じではないセッションがそこにはあった。
 長瀬曰く、上手い歌や楽譜通りの正しい演奏を届けたいわけじゃなく、ロックなのでハートに響かせられたらいい、ということ。

 「自分たちも今日の演奏がどうなるかわからない。でもあなた達を楽しませるため一生懸命やる」
 ライブの前説で、Kode Talkersのもう1人の中心人物、ギターの久保田光太郎氏がこのようなことを言っていた。

 とても共感。

 上手くないといけないのか、とか正しくないといけないのかな、とか正直気にしちゃうんだけど、そんなものはスルーしてやりたいようにやりたい。

 「正しい」「上手い」だけが正義であれば、むしろ世の中はもっとシンプルなはずだ。必ずしもイコール「楽しい」じゃないから複雑で面白くて大変なのだ。「正しい」「上手い」も環境や基準次第で変わるが、「楽しい」は人それぞれだから。
 けど、「楽しさ」は感性や好みの話で、「正しさ」「上手さ」のように良し悪しではないところが良い。自分の「楽しい」が伝播して、同じ感性の人は乗ればよくて、感性が違う人は乗らなければよいだけ。ジャッジじゃない。

 それと「正しさ」「上手さ」が全く無くてもいいというわけでもないだろう。それだけじゃ「楽しい」とイコールになれるわけじゃないよ、という話。

 アーティストからすれば規模の小さい話だが、自分も仕事の朝礼で100名くらいを前にマイクを握ることがまぁまぁある。事前にカンペは作らない。正しさだけよりも朝から気持ちが上がるようなトークを心がける。テーマとポイントは決めて、あとは浮かんだキーワードとその時の自分のテンションで出てくることを表現する。やっぱりその時だから浮かぶことがあるし、寸前で見聞きしたことを拾って引用することもある。そういったライブ感がより生きた言葉になると思っている。好き嫌いはあるんだろうけど、評判は悪くないのが幸い。

 そして、もうひとつ。楽しむ側の立場で大事なこと。自分を楽しませてくれるモノを自分で責任を持って見つけて、勝手に楽しもう。自分をつまらなくするものなんかに気を取られている場合じゃない。人生、時間は有限なのだ。
 何がどうであれ、どうせなら、好きなモノ観て、好きな音楽聴いて、好きなことして楽しむと良い。
 ライブをしている長瀬智也の姿を思い返すと、そんなようなことを思える。